きゅーchanが見たユーミン

SHANGRILAU
〜氷の惑星〜

コンサートレポート そのT




はじめに 〜ステージ解説〜

さあ、待ちに待ったシャングリラだー。コンサート会場へ向かう電車に乗る。もうすでにHighになっちゃってて、笑いが止まらない。会場ではまずグッズ売り場を物色し、パンフレットと、会場でCDを買った先着200名がもらえるというオリジナルバックをGetした。それからホール内に入り、座席を探す。

席はスタンドの4列目だから、ステージからの距離は程よい感じ。席に座ると左斜め前方にステージの正面がある。ステージを見ての第一声は「あれ?!」。テレビでやってたシャングリラUのメイキング番組では、大きな難破船がデーン!とあるっていう話だったんだけど、難破船らしきものが全然見えない。構想を変えたのかな?そんなことはないよな。目の前にはアイスリンクのステージがあり、その上に乗り物のような謎の物体(タイムマシンか?)がある。その物体はほぼ垂直に氷に突き刺さっているように見える。

ホール内は、スモークで煙っていて、それだけで「非日常の世界に来たなあ。」という実感が沸く。「ず〜ん」と腹に響く低音や怪鳥や妖怪の奇声かと思うような奇妙な音が鳴ってきては消え、鳴っては消えしている。ホールの3階席のほうを眺めると、ステージのちょうど真横になる壁にシャングリラUのシンボルマークが映し出されている。しばらくキョロキョロと辺りを眺め回したあと、期待に胸を膨らませて開演の時を待った。


【クラウン1 〜惑星の捜索隊〜】

クラウンの入場 ホールの照明が落とされる。さあ、始まるぞー!ステージ上はドライアイスのような煙に覆われ、視界が効かない。吹雪のような「ゴォー」という音が鳴り出した。ステージの奥の4つの出入り口にぼやっと灯りが見え、防寒着を着た4人の男が現われた。吹雪に見たてたドライアイスの煙に足を取られながら、懐中電灯の灯りを頼りにステージの前の方まで前進してくる。そして吹雪が収まり、4人はステージ最前部に辿りついた。すると、どこからともなくぞっとするような奇声がけたたましく聞こえる。懐中電灯で辺りを確認する4人。突然、4人の懐中電灯の光が客席の一点に集中した。そこをみると、遅れてきたのか通路を歩いていたお客さんとその人を案内する係員が浮かび上がっていた。それを見て、会場は大爆笑。その後、4人はお互いの姿を見出し、無事に合流。「キャッキャ、キャッキャ」と喜びあう。喜んで飛び跳ねていると、何かに「ゴン!」とぶつかった。それが、ずっとステージ上で鎮座していた謎の乗り物である。「何だろう?」。その謎の乗り物に触った男が感電したように震え出した。それを助けようとした2人の男も次々と感電。でも残りの1人は落ち着いて1人1人を救助していく。最初に感電した男は変な乗り物から離れても、まだぶるぶる震えている。それを他の3人は「しらーっ」っとした目でみる。するとバツが悪そうに震えるのを止めてしまった。そのしぐさがおもしろくて、また笑ってしまった。

気をとり直して、もう一度謎の乗り物に近づいてみる。1人の男がその乗り物の側面の入り口から中に入った。そして出てくると、何と女性に変身!賑やかな曲に合わせてコミカルに踊るので思わず笑ってしまった。この変身ぶりを見た3人の男も大笑い。面白がって2人の男も変な乗り物の中に飛びこんだ。すると、今度は2人とも赤ちゃんになって出てきた。先に変身していた女性を追いかけて、低いオッサンの声で「ママ!」と呼びかける。そのギャップがおかしくて、また大笑い。変身した人たちは、もう一度謎の乗り物の中に入ると、変身前の姿に戻る。その後も、原始人に変身してステージ上で大暴れ。

こんなふうに4人のクラウンはしぐさだけで、いろいろ笑わしてくれる。よく見ていると、実に芸が細かい。例えば、移動するときに1歩1歩雪を踏みしめる効果音が鳴るんだけど、その効果音と足の運びが完璧に合っている。さすがプロだなあ。感心することしきりだった。

そうこうしているうちに、1人が何かのスイッチを見つけた。それを4人で押すと、カウントダウンが始まり、「ゼロ」と同時に「ゴォ〜」と地鳴りがしだした。謎の乗り物は赤いランプが点灯し、真ん中の辺りから勢いよく煙が出てきた。それに驚いた4人の男たちは一目散に逃げ出していった。そして、そして・・・


♪ LOVE WARS

LOVE WARS ステージに黄色の照明がはいり、謎の乗り物の上部にある花弁のような飾りがくるくる回りだした。3階席の壁に映し出されていたシャングリラUのマールもくるくる回転。そして聞き覚えのある機械音が鳴り出した。これは「LOVE WARS」だな。いよいよ曲が始まるぞー。ユーミンも登場するぞー。固唾を呑んで見守る。まるで、運動会のかけっこでスタートのピストルが鳴るのをドキドキしながら構えている心境。この曲の前奏はじわじわじわじわと盛り上がっていくんだけど、それにつられてきゅーchanの気分も高揚していく。そしてステージの中央にあった謎の乗り物の真ん中から、ユーミンが湧き上がってきた!きゅー!

 曲が始まった。ステージは黄色の照明に包まれ、楽しい気分にさせてくれる。ユーミンはジーンズで襟と袖口にフワフワの綿毛をあしらった衣装を着ている。帽子もかぶっている。ジーンズはかなり擦り切れていて、ここに来るまでにハードな冒険をくぐり抜けてきたことが窺える。

 ユーミンは謎の乗り物のハッチの上に立って歌っている。1人しか立てない狭い場所なんだけど、ハッチを覆っている花弁のようなものが、歌っている間もずっと、くるくる回っている。ステージは回っていないみたいで、ユーミンが歌いながら向きを変えている。どの角度からもまんべんなく見えるようにという気遣いだろう。
 一曲目から、力強い曲なので、立ちあがって躍りたい気分。でもスタンドのお客さんはみんな座っていて、周りを窺っているうちに、立つ機会を逃してしまった。

歌い終わると、ユーミンは謎の乗り物の中に吸い込まれていった、と思ったら側面の出口からステージ上に出てきた。そして観客との距離が一番近いステージ最前部へ歩み寄ってきた。きゅー!そして、後奏の終わりに合わせて、片手を突き上げてポーズを決めた。カッコイイ!


− MC −

数秒の暗転の後、スポットライトがポーズを決めたままのユーミンにあたる。拍手が鳴り止むのを待って、MC「こんばんは!シャングリラUにようこそ!」。またしばらく拍手。このMCでは今回のコンサートへの意気込みとコンサートのあらすじを語ってくれた。それによると、今回のコンサートは物語形式になっていて、表向きのストーリーはユーミンが消息を絶った船・シャングリラ号の行方を探すというものだ。でも、本当のストーリーは1人1人の胸の中にある。本当のストーリーを見つけるためにイマジネーションのスイッチをONするように、と促した。でもきゅーchanは想像力ゼロだからなあ。大丈夫かなあ。ちょっと不安。


♪ Delphine

Delphineの一場面 今度は、群青色の照明。この曲にピッタリだなあ。ステージ上は再びドライアイスで覆われた。ユーミンは帽子を取った。同じ衣装だけど、帽子があるかないかで全然雰囲気が違う。帽子を取る前は、活き活きした感じだったけど、帽子を取ればしっとりモード。帽子だけでなく、ユーミンの演技力が大きく作用してるのかなあ。

アイスリンクのステージをすっぽり覆うぐらいの大きな白い布が出てきた。その四隅をロシアのスケーターが持ってふわふわ動かしている。非常に軽い布で、その浮遊感がたまらない。ユーミンの歌にあわせて、その布を巧みに操っていく。スケーターの位置が入れ替わるときに布がねじれたりするんだけど、そのねじれ方が海の底のゆったり・ねっとり動く水のうねりをうまく伝えている。この動きはアイススケートだからこそできるんだろうなあ。また、ステージから溢れ出たドライアイスの煙がどろどろっと流れ落ちていく様も、深海の淀みを連想させてくれる。

歌の2番のサビに入ったところで、白い布が持ち上げられ、布の下から新たに水色のコスチュームの女性スケーターが1人現れた。布は取り除けられ、リンク上は女性スケーターの1人舞台。情感のこもった滑らかなスケートで、もし海の妖精がいたら、こんな感じかなあと思いながら見ていた。またリンクの幅いっぱいいっぱい使って滑っているのもダイナミックですばらしい。スピンしたときには、ドライアイスが舞い上がり、その光景はとても幻想的。特に上体を反りながらスピンするところが美しく、無性に切なくなってくる。

その後、布が再び登場し、海の妖精は布の下に入って、布の動きに合わせて滑っていき、潮が引くように消えてしまった。

実は、このコンサートの演出を見る前までは、この曲はそんなに好きな曲ではなかった。でも、これを見ると、深みのある曲だということがわかって「いい曲だなあ」としみじみ思えた。こんなに感情移入して聴けたのは、これが初めてだ。こんな風に曲の意味を再発見できるのもコンサートならではの醍醐味だよね。


♪ 砂の惑星

砂の惑星・前半 薄墨色と緑の照明というちょっと怪しい光で照らされたアイスステージの中央までユーミンが下がっていった。心なしか冷たい風が首筋を抜けていった気がする。この曲を聴くと異次元空間を想像してしまう。前奏だけで十分不気味な雰囲気だ。そこへステージの四隅から、腰を曲げて歩くボロボロの集団が沸き出てきた。そして、歌っているユーミンを取り囲み、ステップを踏んで踊りだした。見てると"ゾンビのオクラハマミキサー"といった雰囲気で、なんだかちょっとおもしろそう!もちろん、不気味さのほうが勝っているけど。

砂の惑星・後半 最初のサビの部分で、悪魔っぽい黒や赤の悪魔っぽい衣装を着た集団が入ってきた。彼らは30センチぐらいあろうかという高足のスケートを付けている。普通に滑るだけでもすごいのに、いろんな姿勢でスピンしたりしている。その間にユーミンはステージの最前部に移動。その後、蜘蛛がおりてくるように、キューブ型の大きな鉄枠が降りてきた。ユーミンはそれに乗り、大サビの“あ〜あ、故郷離れ〜”の部分で、すーっと空中に舞い上がった。そして熱唱。ユーミンの姿が神々しくみえる。キューブ型のゴンドラは不安定そうな乗り物なんだけど、ユーミンは腰ベルト一本で体を支えている。きゅーchanだったら足がすくんじゃうなあ。でもユーミンは堂々と歌っている。すごいぞー!下のリンクでは、まだ大技が繰り広げられている。なんと手にスケートの歯を付けて、倒立で滑っているのだ!お尻にニセの顔をつけているんだけど、倒立すると、ちょうどバンザイして滑っているように見える。その後も、ボロボロの集団と悪魔集団が入り乱れ、ユーミンの歌に合わせて滑走を続ける。そして、ユーミンが乗り込んだものと同じぐらいの大きさのキューブ型の鉄枠を、黒い悪魔の2人がバトンのように軽々と回している。その光の反射が冷ややかな雰囲気を醸し出している。その光景はまさに「氷の惑星」。この演出を見ていると、悪魔に見えたのがこの惑星の支配者で、ボロボロの集団は奴隷らしい。支配者が奴隷に笞をふるい、酷使している。絶対に行きたくない惑星だー!

歌い終わると、ユーミンは再びリンクの上に降り立った。そのころには、先程までいた奇妙な集団は波が引くようにすーっと消えてしまった。灰色に煙った何もない世界をさまようユーミン。不安そうな目で辺りを見まわす。(ユーミンの歌で「コンパートメント」というのがあるんだけど、その歌の主人公が眠り薬自殺をする。そして行きつく場所が「白夜の荒野」であると歌っているんだけど、まさに「白夜の荒野」という表現がピッタリな光景である。)そこで演奏が終わり暗転。


♪ Glory Birdland

バランスアクト 濃紺の照明。ユーミンはステージの最前部中央で、観客に背を向けうつむいて立ち尽くしている。その背にはさみしさと不安が色濃くうつる。すると、ステージ中央にユーミンの身長より少し高い台が出現。その上には1人の男性が乗っている。その男性は、寝かせた筒の上に置かれた不安定な板の上でユラユラ動きながらバランスを取っている。その男性がユーミンに声をかける。見上げるユーミン。その男性は打ち沈んだユーミンを力づけようと、サーカスの技を披露する。肩幅もない四角い台に筒を寝かせて置き、さらに四角い台、そして板積み重ねて、その上で倒立をする。それだけですごいのに、倒立まま、体を一回転させた。「うお〜!」と観客から驚きの声が上がり、拍手拍手!男性は演技を終えると、「どうだい?」という感じでユーミンに語りかける。でもやっぱり沈んでしまうユーミン。そこで、その男性は今度は四角い台・筒・四角い台・筒・四角い台・板を順に積み重ね、その上に乗りバランスを取ろうとするようだ。これだけ重ねるとその男性の胸ぐらいの高さになり、その板の上に乗るのは、見るからに危険だ。男性がちょっとでも動くとグラッと揺れる。「もう、辞めてー!」と悲鳴のように言う観客もいた。男性は慎重に慎重にタイミングを見極め、そして乗った!!すごーい!拍手〜〜〜〜!でも乗ってからもユラユラしているので、ひやひやものだ。ステージから3メートル以上の高さがありそうなので、もし落ちてしまったら、ただでは済まないだろう。(後日、ユーミンがパーソナリティーをしているラジオを聴いたところ、この話をしていた。ユラユラしながらバランスを取っているのを見ていると、それを見ているユーミンも奥歯を思わず噛み締めてしまうそうだ。)それなのに、その上で体をまた一回転させる。もう、見ているきゅーchanまでが緊張して、体中の筋肉が強張ってしまう。そして無事に成功したのを見届けると、会場ではもう一度拍手の嵐!超人的な技と勇気に感動だー!

その男性お蔭で、ユーミンは孤独と不安の世界から脱出。それを見届けた男性は台ごとステージ左後方から退場した。

Glory Birdland 濃紺から明るい白を基調とした照明にかわり、前奏が流れ始めた。そこへ、葉っぱをモチーフにした緑のコスチュームの2人が登場。森の妖精、もしくは森の小人といったイメージだ。スケートしながら、銀色のボールをお手玉の要領で器用に操っている。1人が操っていると、もう1人が、「ちょっと貸してよ!」とばかりにボールを取る。そして2人でたくさんのボールを操るんだけど、その動きはめちゃくちゃ複雑。それを「ちょっとした手遊び」という感じで、余裕そうにこなしているのが、すごい!ユーミンは、ステージの中央で歌っている。歌と歌の合間に、ちらっちらっと森の妖精を見て、微笑む。体全体でリズムを取りながら、ノリノリで歌っている。すっごく楽しそう!その後も、ボールやクラブを持った森の精が続々と出てきて、大道芸のオンパレード。銀色のボールやクラブのきらめきが、森のしずくみたい。ステージ上は活き活きとした森という雰囲気で、できることならきゅーchanもあの中に入りたいなあ、なんて思ってしまった。

間奏で、ユーミンはステージ最前部へ移動。低いドラムの音が流れる中、ステージ右奥から、大玉に乗った女性が登場。ステージ中央まで進んできた。そしてユーミンが大サビの部分を歌い出すと、大玉に乗ったまま銀色のフラフープを回しだした。それも、腕・首・腰・膝、それぞれにフラフープをかけて回している。もう人間の領域を超えた技だ。圧倒されて、ただ見とれるより他なかった。森の精の多くは、銀色のリングとお手玉のように操っている。それもすさまじい数・すさまじいスピードで。その光景を眺めていると、リングがシャボン玉のように見えてきた。それも、いつまでも途切れずに吹き上げるシャボン玉。夢みたいな光景だ。

歌が終わりと同時に、ステージは暗くなり、ユーミンにスポットライトが当てられた。ユーミンは右側の森の精から銀のボールを受け取った。そして少し助走を付け、後奏の終了と同時に左側の観客席にボールを投げ込んだ。おー!いいなあ。きゅーchanのところにもボールを投げてほしいよー。でも距離が遠いので明らかに無理だなあ。


♪ ずっとそばに

ずっとそばに 続いては、静かな海が似合う切ない歌。ステージ上はユーミンだけになった。ステージの縁をゆっくり歩きながら歌っている。そのユーミンの歌声を聴いていると、心も体もリラックスする。ふわふわ浮いているような感覚で、とても気持ちいい。悩みとかあっても、すーっと消えてゆくだろうな。ユーミンが近づいていくと観客が両手を上げて手を振っている。ユーミンも手を振ってそれに答えている。もうすぐ、ユーミンがきゅーchanの近くにも来るぞー!「ユーミン!こっち向いて〜!」という思いを込めて、張りきって手を降った。けれども、如何せんスタンド席ではちょっと遠すぎる。こういうときはやっぱりアリーナ席じゃないと。ユーミンはステージ両脇のお客さんに念入りにファンサービス。両脇の観客は演出の半分ぐらいは見ることが出来ないから、ここでサービスしておかないと不公平になっちゃうもんね。

やがてユーミンはステージ中央に移動。ピンクとグリーンのやわらかな光に包まれて、何だか夢見心地。でも実は、きゅーchanは逗子のコンサートでこの曲を聴いたときのほうがしみじみしたんだよねー。そのときも特に演出はなかったんだけど、海のそばの野外コンサートだから、潮風・海のにおい・そして夜空に輝く月という天然の演出が、この曲の良さを余すところなく引き出してくれたんだよね。でも、今はホールの中なんだから、そんな無い物ねだりしてもしょうがないよねー。





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